山道の階段の作り方|工法6種の比較と現場条件からの選び方

山道の階段は「どう作るか」より先に、材料をどこから運び、誰が据え、誰が直し続けるかで決まります。工法は好みではなく、現場の制約から逆に選びます。

担当区間に階段を整備したいが工法が決まらない、見積の依頼先も決められない。そういう方に向けて書いています。カタログを比べる前に、次の4つをご自身の現場について答えられるかどうかが分かれ目です。

  1. 材料をどこから手に入れるか
  2. 現場までどう運ぶか
  3. 誰が据えるか
  4. 誰が直し続けるか
目次

結論:斜面階段は「作れるか」ではなく「メンテナンスできるか」

車が寄らない、重機が入らない。山道の整備では、これが前提条件になることが大半です。

このとき効いてくるのは、工法そのものの性能差ではありません。材料をどう調達し、どう運び、誰が据え、誰が直しに行くのか。階段作りの前後にある工程が、成立するかどうかで工法を決めます。

耐久性の高い工法でも、材料が現場まで届かなければ選べません。安価な工法でも、据える技能を持つ人材を確保できなければ続きません。逆に性能が中庸でも、人が背負って運べて手道具で据えられるなら、その現場では現実的な選択肢になります。

見積を取る前にこの4条件を書き出しておくと、聞くべき相手と、聞くべき内容が先に決まります。

この記事の立ち位置

1974年創業の山道階段メーカーが書いています。当社の製品は電力会社の巡視路や公共機関の避難路整備などで50年以上に渡って使われ続けており、カウントできるだけでも階段・ステップシリーズは累計56万段以上の納品実績があります。

ただし、この記事は自社製品を勧めるためのものではありません。工法は現場条件で決まるものなので、まず選択肢を公平に並べます。

分野によって呼び方が違う

同じものを指していても、分野によって呼び名が変わります。ここを外すと、資料も見積も探せません。

分野呼び方
公共土木階段工(積算資料・標準図はこの語で探す)
登山道(山道)段差処理・ステップ工
電力の巡視路巡視路階段・巡視路ステップ

注意点がひとつあります。治山事業では、同じ「階段工」がなだれ予防工を指す場合があります。山道の歩行用階段は「歩道整備工」側で探すのが確実です。

山道で使われている工法

ここではまだ優劣を付けません。それぞれが成立する条件が違うためです。

① 丸太階段

杭を打ち、横木となる丸太を留めて段をつくる方法です。林野庁の「森林整備保全事業工事工種体系」では、歩道整備工の細別として「丸太階段」(単位:本)が位置づけられており、発注時の数量表に載せやすい利点があります。

材料を現地で調達でき、掛矢と鋸を中心とした手道具でそろえることが可能。長距離の整備で選ばれることが多い、一般的な方法です。

② 擬木階段

丸太の形をした再生プラスチック材を横木に使い、丸太階段と同じ組み方をします。腐朽はしませんが、杭を打って横木を留める作業そのものは変わりません。材料が変わっても、据える手間は変わりません。

③ 石組ステップ

現地にある石や木を使い、その場でステップを刻む方法です。景観と生態系への整合が高く、搬入がほとんど要りません。

一方で、石を読む技能への依存が大きく、現地に適した材料がない場所では成立しずらい工法です。

④ 現地打ちコンクリート階段

耐久性と形状の自由度は高い工法です。ただし山中では、生コンをどう運ぶかが大きな制約になります。

林野庁の標準歩掛では、練りまぜから、打ち終わるまでを外気温25℃以上で90分、25℃以下で120分以内と定めています。同じ歩掛は現場練りも選択肢として用意しています。加えて養生期間が必要なため、工期が延びます。

⑤ 鋼製・グレーチング階段

工場で製作したユニットを据える方法です。形状の精度が高く、手摺も付けられます。ただし部材が重量物になるため、重機でアクセスできることが前提になりやすく、候補に挙がるのは車道からの距離が近い区間に限られます。

⑥ 樹脂・再生プラスチック製ステップ

あらかじめ成型されたステップを地表面に置き、杭で固定する方法です。段の形を掘って作るのではなく、足掛かりを必要な位置に据えるという考え方です。

地表面をほとんど削りません。部材が軽く、人が背負って運べます。施工に必要なのは手道具です。

前提もはっきりしています。杭が打ち込める地盤であること。そして部材は購入品なので、現地では調達できません。

⑦ そもそも階段を作らない

道をジグザグに切り直して勾配そのものを下げれば、段差処理の必要を減らせます。踏み跡をそのまま道として使い、何も足さないという選択もあります。手を加えないことが最善の場所は実際にあります。

ただし線形の付け替えには法令上の手続きと関係者の合意形成が伴い、担当区間の部分改修という枠では選びにくいのが実情です。

工法は「作る過程」で比べる

工法は完成した姿ではなく、作る過程の4工程で比べます。

【図解1:工程比較表】

材料の調達現場への搬入据付維持
丸太階段現地調達ほぼ不要杭打ちの技能横木の交換
擬木階段購入品人力可杭打ちの技能杭・留め具の点検
石組ステップ現地調達ほぼ不要石を読む技能据え直し
コンクリート階段現地で練る生コンが要検討型枠と養生部分補修が難しい
鋼製階段購入品重機が前提重機と組立錆と固定部の点検
樹脂ステップ購入品背負って運べる手道具で可傷んだ段のみ交換

※優劣表ではありません。どの列にも「重い」工程があります。現場でどの工程が成立しないかを見つけるための参考用の表です。

① 材料をどこから手に入れるか

現地調達できるもの(丸太・自然石)、購入品を手配するもの(樹脂・鋼製・擬木)、現地で練るもの(コンクリート)に分かれます。

ここはトレードオフとして読むところです。丸太は現地調達で材料費を抑えられますが、伐り出し・玉切り・皮むきという工程が階段を作る前に入ります。材料費がかからないことと、手間がかからないことは別問題です。

② 現場までどう運ぶか

山中への資材運搬には、仮設道路・索道・ヘリコプター・モノレールといった方法があります。神奈川県では、協定を結んだ団体が春に修繕箇所と必要資材を整理し、県が秋にヘリコプターで資材を運搬しています。

実務上、注意が必要なのは小運搬の扱いです。荷下ろし地点から施工箇所までを誰がどう運ぶのか。ここが曖昧なまま見積を比べると、後になって条件が揃っていなかったとなる可能性が出てきます。

③ 誰が据えるか

この記事で最も伝えたいのは、ここです。

総務省「登山道の整備・維持管理の実態に関する調査 報告書」(令和6年3月)には、次のように記されています。

ほぼ全ての調査対象公園において、作業者の高齢化による人員確保困難の問題が挙げられた。そのため、現地に詳しい地元の作業者が減少しており、後進の育成も必要となっている。

一部の現場の事情ではなく、調査対象のほぼ全域で共通していた、という記述です。

丸太階段は手道具で作れる点で優れた工法です。一方で杭打ちなどは、負担の大きい工程でもあります。硬い地盤では時間がかかり、緩い地盤では効きません。どこにどの深さで打つかは技能の領域です。石組はさらに、石を読む技能を必要とします。

材料が手に入り、運搬手段があっても、据える人材が確保できなければ整備は進みません。

④ 誰が直し続けるか

和歌山県林業試験場の野外耐久試験では、剥皮小径丸太を無処理・半埋設で据えた場合、腐朽被害度からみた耐用年数はスギ2年、ヒノキ3年という結果でした。

ただし、この数字だけを取り出すのは適切ではありません。同論文は冒頭で、木材の耐久性は気象や設置条件により劣化の程度が著しく異なり、耐用年数を一律に示すことは困難だと述べています。

あわせてお伝えしておきたいことがあります。木製の土留工には、木材が腐朽するまでの間に植生が繁茂し、その働きが構造物の機能を代わりに担うことを期待するという考え方があります。丸太階段もこの延長にある工法で、腐ることが即座に失敗ではないという前提の上に立っています。年数の数字だけで評価すると、この前提を見落とします。

一方で、環境省「大雪山国立公園における登山道整備技術指針 2016年改定版」では、「木道、階段工等登山施設の老朽化」「破損」が荒廃の指標として扱われています。作った構造物は、直され続けることまで含めて整備だということです。

現場条件から候補を絞る

【図解2:工法選択フロー】

材料・搬入・据付・維持の4つを書き出せば、候補は2つまで絞れます。まずは自分の現場の4条件を書き出してみてください。

3つの分岐がいずれも当てはまらない場合は、無理にどれかを選ばず、別の工法を専門家と検討してください。

掘る階段か、掘らない足留まりか

【図解3:掘って段をつくる方法と、傾斜に足掛かりを置く方法の比較】

段差処理には、大きく2つの考え方があります。

一般的な階段は、踏面と蹴上によって階段の形を作り、一定の勾配を設計します。設計した形に地形を合わせていく、という順序です。

もう一方は、自然斜面そのものの傾斜を活かし、足掛かりとなるステップを必要な位置に設ける考え方です。大きな蹴上構造を造成せず、斜面上にステップを設置します。

山道の傾斜は一定ではありません。同じ区間の中で緩んだり急になったりします。段の形をあらかじめ決めて作る工法では、傾斜が変わるたびに設計値を当て直すことになります。足掛かりを置く考え方では、ステップごとの位置・間隔を調整しながら対応しやすくなります。

なお「登山道 階段」と検索すると、「登山道に階段は必要か?」という議論のお声があることも事実です。「いらないのでは?」というお声の多くは階段そのものではなく「掘ること」に関係しています。立てるべき論点は「階段を作るか、作らないか」ではなく、「掘る階段か、掘らない足留まりか」です。

この方法が使えない場所

当社の階段・ステップシリーズでは、この掘らない階段工法を開発しました。

とはいえ、どこにでも据えられるわけではありません。使えない条件を先に書きます。

著しく軟弱で杭が固定できない地盤/崩落・地滑りの危険がある斜面/接地率80%以上を確保できない場所/杭を十分に打ち込めない場所では使用できません。

この工法は地表面と杭で保持力を得ています。杭が効かない、あるいは地表面が動く場所では、その前提が崩れます。

もうひとつ、目的の範囲についても明記します。法面補強や斜面崩落防止を目的とする製品ではありません。 人が安全に上り下りするための足掛かりであって、土を止める構造物ではありません。地盤の安定そのものに不安がある場所では、まず地盤側の検討が先です。

他の工法にも、同じように成立条件があります。コンクリートは生コンを運べるか現場で練れること。石組は現地に適した石があること。鋼製は重量物を搬入できるアクセスがあること。丸太は現地に材があり、伐り出しと杭打ちを担える人手があること。

当社の製品について

弊社では創業以来、「自然と人の安全な移動の調和」を重視した斜面アクセスシステムの開発に取り組んでまいりました。

特に掘らずに足掛かりを置く工法を成立させるための踏み板階段である、レールート、ステップルート、NOBOROKKAは、半世紀以上プロの現場で選ばれ続けています。

耐久年数に関してはお問い合わせが多いのですが、目安でのみのお答えにとどめさせていただいています。理由は、紫外線による劣化は設置条件で大きく変わり、日照条件が違えば結果が変わるためです。実態としては、10年以上使われている現場が大半で、15年から20年近くご使用いただいている現場も多くあります。傷んだ段が出た場合も、その段のみ杭を引き抜いて交換が可能です。

斜面への階段設置で・お見積もり依頼・カタログのご請求・ご相談がある場合には、お気軽にフォームよりご相談ください。

▶︎巡視路用の山道階段「レールート」(発明奨励賞受賞)の詳細はこちら

▶︎巡視路用の山道階段「NOBOROKKA」(グリーングッドデザイン賞受賞)の詳細はこちら

よくある質問

Q. 重機が入らない現場では、どの工法が候補になりますか。

材料を人が運べる工法が候補です。丸太(現地調達)、自然石(現地調達)、樹脂ステップ(背負って運べる)の3つです。生コンと鋼製ユニットは、搬入方法の検討から先に始める必要があります。搬入手段が決まらないうちに工法を決めると、後で戻ることになります。

Q. 山道斜面に階段を作る前に、何を整理しておけばよいですか。

次の4つです。①材料を現地調達できるか ②荷下ろし地点から施工箇所までの搬入手段 ③据える人数と使える道具 ④直しに行ける頻度。この4つが決まると、相談すべき相手が決まります。

まとめ

  • 山道の階段は「作れるか」だけでなく「メンテナンスはどうするか」も重要です。 車が寄らない現場では、工法の性能差より前後の工程が成立可否を決めます。
  • 工法は、材料の調達・現場への搬入・据付・維持の4工程で比べます。
  • 分岐点は、現地に材があるか、そして杭が打てるかです。 この2つが分かれば候補は2つまで絞れます。
  • どの工法にも使えない場所があります。 性能値より先に、成立条件を確認してください。

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